第3章 僕とデートして下さい
そうか。
買いに行かせる、その手があった。
「………お嬢様」
「何よ」
「手、邪魔です。退いてください」
「やだ」
「お嬢様」
「…………嫌」
よく考えたらクローゼットにあるの、全部あたし好みなのよ。嫌いじゃない。むしろ、好き好んでずっと着ていたんだもの。
誰かに買いに行かせる選択肢なんて、はじめから頭にあるはずなかったのよ。
それがなんだか悔しくて。
目を反らしながら、反発、した。
「退かないなら、退かせるまでです」
「え?…………あっ」
ぎゅ、っと握っていたはずの両手は、簡単にハイセによって壁へと縫い止められていて。
その拍子に、手から先ほどのクレープが、滑り落ちた。
「あーあ、落としちゃいましたね」
「だって、ハイセが………っ」
「………泣くほど、食べたかったですか」