第3章 僕とデートして下さい
ハイセがいたはずの壁側に、今度はあたしがいる。
つまり、今度はあたしが、壁ドンされる側。
壁に押し付けられる瞬間に、頭の後ろに回されたのはクレープを持っているはずの掌。
器用にもハイセは。
クレープを握りつぶすことなく、なおかつあたしの後頭部までも、壁に激突しないように支えたのだ。
ゆっくりと後頭部からハイセの掌が抜き取られると。
ハイセはあたしの目の前に、クレープを持ってきた。
「食べたいですか?」
「…………いらない」
よからぬこと、絶対企んでるもん。
「そうですか、残念」
「え」
ハイセはそう、低く呟くと。
迷わずそれを口の中へと一口、放り込んだ。
甘いの、苦手って言ったくせに!
むぅ。
とふくれて顔を反らした瞬間。
顔を片手でつかまれて、抵抗する間も与えられずに。
すぐさま唇が重なった。