第3章 僕とデートして下さい
日曜日。
ハイセはいつもの執事服を脱ぎ捨て、今日初めてみる私服。
無地のTシャツに、黒のスキニーパンツ。
その上に七分くらいの、やっぱり黒の、ちょっと長めのチェスターコートを羽織っていて。
七分からのぞく腕時計が、なんとなくカッコよくて目がいってしまう。
ついでに何故か。
いつもはきっちりとしている前髪は無造作に下げられていて、チラチラと見える鋭すぎる漆黒の瞳を隠すようにかけられた眼鏡。
なんだろう。
この妙な色気は。
「お嬢様」
「は、あ………なに?」
やば。
不意打ちにかけられた言葉に、思わず声が裏返る。
「あちらが、グレープでございます」
「え」
ハイセの視線を辿れば。
小さなワゴン車に確かに『クレープ』とかかれていた。
「食べる!」
甘い匂い。
ヤバイ、美味しいよ絶対!
「では、並びましょうか」
「え」
「ここでは、並んで商品を購入するのですよ」
並ぶ。
といってもこれ、けっこう並んでない?
でも。
「いいわ、並びましょう」