第3章 僕とデートして下さい
「ですから、今度の日曜日、ご自分でお選びになられて下さい」
「何を?」
「何でも」
「?」
「お召し物でも、化粧品でもスキンケア用品でも」
「お店、詳しくないもの」
「はい、だから、僕とデートなのです」
「………」
確かに。
学校では放課後、けっこうみんな『買い物』言ってるわ。
くれーぷなるものを食べたり、ぷりくらなるもので遊んでるわ。
あたしはいつも送迎があるから行けないのだけれど。
実はそれ。
憧れだったりもするのよ。
「………いいわ」
ハイセで、予行練習でもしようじゃないの。
「はい、お嬢様。では宿題、頑張って下さいませ」
「ハイセ」
背筋のピンと延びた、大きなハイセの姿勢のいい背中へと問いかける。
「パパには、この前のテスト、話してないわね?」
「もちろんにございます」
「ママにも?」
「ご安心下さいませ」
その完璧なまでの笑顔が、一番信用できないんじゃないっ。
笑顔で『お嬢様』を脅迫する執事の、何を安心したらいいのよ。
「…………」
不安しか、ないわ。