第2章 ダンスのお時間です
もうこれは。
くたくたになるまで体を動かした方が良さそうね。
そのままもう、寝てしまうに限るわ。
余計なことを考えずに寝てしまいたいもの。
「僕が、ですか?」
「他に誰がいるのよ」
「……」
「何よ」
「僕、ダンスはちょっと」
えっ?
今、なんつった?
「ハイセ、踊れないの?」
「そうですね」
嘘。
嘘でしょ嘘でしょ。
ハイセにもできないの、あったの?
「踊るわよ、ハイセ」
「ですから」
「大丈夫よ、隣にいてくれるだけでいいから」
鼻歌でも歌いながら、ハイセをホールの真ん中まで連れてくると。
彼は観念したようにため息を吐きながらしろい手袋をはずして、自分の胸ポケットへとしまった。
「楽しそうですね」
「そんなことないわ」
「ダンスは嫌いだと、思っていましたが」
「そんなこと、ないわ」
「仮病まで使ってサボろうとしておりましたので」
「………」
バレてたのね。
「お嬢様」
添えられていた腰に力が入り、体が密着。
「あとは自己責任で、お願いします。」
右手を握るハイセの手にも力が入ると。
音楽に合わせてふわ、っと。
体に羽がついたように、勝手に体が動き出した。
あ、あれ?
なんで?
なんでこんなに体が軽いの?
ううん。
違う。
ハイセのリードが上手なんだ。
ハイセの、リード。
ハイセの?
ハイセ、ダンス出来るの?
ううん。
出来るなんてレベルじゃなくて。
これ。
さっきいらした先生よりも上手じゃない?