第6章 弱さ *裏
『あっ、安室さん…っ』
(いたの!?)
慌てて顔を背けるけど、それは安室さんに阻止されてしまった。
安「零…って呼んでくれないんですか?」
クスクスと笑いながら、抱き寄せられる。
恥ずかしい。
聞かれてたなんて。
安「…でも、外では、」
透、にしてください。と。
抱き寄せた耳元で、安室さんが囁いた。
耳元で。
囁くから。
私の顔は真っ赤になって。
『透、さん…っ』
安「好きです。」
微笑んだ安室さんから抱きしめられる。
私を好きだというその言葉は、嘘じゃないように思えた。
安「強引にしてすみませんでした。
…だけど、偽りの恋じゃないですよ?」
私の考えが分かったのか、いつだったか私が彼に告げた言葉を使って念を押されて。
「咲が嫉妬させるからです」と言う安室さんを、じっと見つめる。
『嫉妬…』
彼を信じていいのだろうか。
私はどうしたいのだろうか。
安「…信じさせますよ。」
自信たっぷりに言うその表情が、格好いいと思ってしまった。
安「沖矢昴との関係も気になりますが…」
透さんが、欠伸をしながら時計を見た。
時刻は20時を過ぎたところで。
安「…その話は後にして、何か食べますか?」
出来れば後でもしたくないけど。
なんて言えずに頷く。
安「準備しておくので、シャワーを浴びてきてください。」
先に浴びたので、という透さんにお礼を言うと
私は浴室に向かった。
シャワーを浴びてリビングに向かうと、テーブルには料理が並んでいた。
『わ、美味しそう…』
安「ちゃんと髪を乾かしてください。」
見とれていると、肩にかけていたタオルでわしゃわしゃと髪をふかれる。
沖矢さんといい、透さんといい、
どうしてこんなに料理が上手いのか。
きちんと髪を乾かしてから、透さんと向かい合って座る。
いただきます、と声を揃えて笑い合うこの空気が、なんだか嬉しかった。