第12章 もう一度、もう二度と
僕の腕を掴むとぐい、とリビングの方へと連れていかれる。すると飛び込んで来たのはテーブルの上に綺麗に並べられた朝食達だった。
大きなサラダボウルにはたくさんの野菜が乗ったサラダ。スクランブルエッグにウインナー、タコさんにしたかったんだろうそれは面白い形になっていたけれたど、頑張ってくれたんだと思ったら微笑ましくて仕方ない。
食パンは、焼きたてが好きな君のことだからまだ焼かずにおいてあるんだろうね、買ったばかりのトースターを傍にセッティングしているのは流石だ。
そして、コーヒー派の僕と紅茶派の君...それぞれ専用のカップが置いてある。
良い香りの元はこれだったのか、さっきの君の言動と目の前の光景に驚きつつ胸がいっぱいになってしまった僕は言葉を失ってしまった。
「ほ、本当に、簡単すぎてあの、光忠さんがいつも作ってくれるものには程遠いんだけど...!」
「いやそんな、充分だよ」
そんな僕の隣に立つ君の、胸の前で握りしめた手が少し震えているのがわかってそっと肩を抱く。ここまでに至るまでに色々と思うことがあったのかな。それが何なのか知りたいな、そう思っていると
「苦手なことから逃げずに向き合っていこうって、光忠さんと会ってからずっと考えてて」
「...え」
「完全に釣り合うように、はまだ無理でも、どうしたら喜んでもらえるだろうって、その」
「......」
「...光忠さん、私の手料理、食べてみたいって言って、くれた、し...」
こんなものが手料理なのかと言われたら自信がないけど...とその文字通り自信が無さげな声はどんどん小さくなっていく。
それでもこの子は一生懸命考えて、動いてくれたのだ。僕の、為に。
「なので!!」
「ご、ご指導ご鞭たちゅを頂けたら!!!!」
「噛んだわ!!!!!!」
「...っふは!」
これでもかと顔を赤く染めて、照れ隠しに上げた大きな声に思わず吹き出すと、君も一緒になって笑った。もう震えてはいないけれど、とても緊張をしていたんだろう。
そういう僕もさっきから鼓動が早くて困っている。緊張と言うよりこれは...