第10章 君と歩む世界
「僕も、君が大好きだよ」
「ああでも...さすがに今回は照れてしまうね...」
赤い顔のまま困ったように笑う彼はさっきの暗い顔は嘘だったかのように晴れ晴れとしていて。ああ、私は思っていた以上に寂しい思いをさせてしまったのだと痛感した。
そして今まで以上に“ひとり“より“ふたり“を実感した。一緒に歩む以上更に頑張っていかねばと、そう思った。
「あの...ごめ...」
「それはいいから、代わりに君からキスしてくれたら良いよ」
は?
謝罪の言葉を紡ごうとした唇を人差し指で塞がれたかと思うと、とんでもない要求をされた。その顔は上機嫌。おまけに大きな体はソファに座る私の上から覆いかぶさるように迫って来ていて逃げ場が無い。押さえつけられているかのようで、私が動けるように拘束まではして来ない。くそ...イケメンだからって許されると思っているのか...ずるいぞ...。
だけど、これで彼の気が済むのならとそのがっしりとした肩に手を添えた私も相当だ。抵抗は多少するけれどまあ無駄だよね。もう随分前に陥落しているのだし、無意味だ。
ただ恥ずかしいだけ、という情けなくもしょうもない理由で彼を振り回したのだから荒療治だろう。目を瞑ってくれただけ、有難い。
これは早急に敬語もどうにかしなければ身が持たないなあと思いつつ、私はその形が良い唇目掛けて顔を動かすのだった。