第9章 誰かと一緒に生きていくのなら君がよかった
「今日は僕が出すよ!」
「おっ、いいのか?」
「うん...今度は3人で呑みたいな」
「そいつはいい!俺も彼女に会ってみたくなったからな!」
今まで先輩に恋人を会わせたことも、そうしたいと思った事もないけれどあの子なら、と思う。両親に紹介する感覚...なんて言ったら大袈裟かな?大切な身内に大切なパートナーを紹介したい、僕自身こんなことを考える日がくるなんて思ってもみなかった。
軽く手を振って別れると、すかさず彼女に「今から行くね」とメッセージを入れ足早に駅へと向かった。ここからはさほど遠くはないから日付が変わる前には行けるだろう。本来なら明日の彼女のお休みに会わせて出向くつもりだったんだけどな。僕はあの子の事になると本当に格好がつかなくなるみたいだ。だけど、それが良いのかも知れない。
無理して気を張るよりも自然体でいられるし何より格好を付けられる場面は必ずあるし今じゃない。上手く言えないけれど、何でもかんでも必要以上に気取らなくても良いのだとそう気付いた。まだ上手く立ち回れないこともあるけれど何とかなるだろう。笑ってそばに居てくれる君がいる限り。
電車の窓から流れる街の明かりを眺めながら、この後あの子に会ったら真っ先に抱きしめてしまいそうだなあと思い、心を落ち着かせようとしたけれど...予想以上に難しい。
大人しく自分の気持ちに従うことにしよう。