第8章 そろそろ終わりに致しましょう
「だけど、僕はそれよりももっと違う関係になりたいんだ」
「“飲み友達“、以上の関係になりたい」
次はいつ会えるのか、お互いの状況を探り探り連絡を取り合って都合が合えば会える。
友人としてはごく自然の流れだが、それだけではダメなんだ、何のしがらみもなく会いたいと思った時に会いに行ける距離にいたいと彼は言った。それは物理的なものではなく心の距離。”友達“ではなく”恋人”になって欲しいと。そして
「君を幸せにする存在になりたい、誰よりもそばにいたいんだ」
「君のことが、好きだよ」
”終わり”という言葉は次への1歩のための、長船さんなりのけじめなんだ。そこまで考えて、なあなあにしないでくれたのだと分かったら、もうダメだった。もともと泣きそうだった私はもうダムが決壊したかのように涙が溢れて止まらない。それでもと震える唇をなんとか動かして伝えられた言葉は拙いものだったけれど
「...わたし、も...おさふねさんの そばにいたい、です...!」
それに「うん」と小さく発した長船さんは繋いでいた手を引き私を抱き締めてくれた。彼の力強い腕の中で散々泣きじゃくった私が、「私も貴方が好きです」と伝えられたのは泣き止んで落ち着いた頃。
もうすっかり日が暮れて肌寒かったけれど、長船さんの優しい笑顔が温かくてちっとも気にならなかった。