第5章 君は知らない
予め休みの曜日を聞いていたから、その日に合わせて有休も取った。普段真面目に勤務しているし同僚達に何かあれば仕事を代わったりもしていた。それが良かったのだろう、すんなりと許可が降りてほっとしている。
夜だけでなく、昼間明るい時間帯に君と一緒にいられたらと単純に思ったんだ。夜は夜でもちろん楽しいけれど、一緒にいられる時間には短いからね。
今頃は仕事中かな?販売業務だから混まない限り残業にはならないようだし...もしかしたら休憩の時間に見てもらえるかもしれない。
早く、早く返事が欲しい。
~♪
「...!」
来た!もう、まるで学生の頃のようだ。堪え性の無い自分に軽く苦笑いをしながらも即座にアプリを立ち上げた。あの子からだ。
“お疲れ様です“
“え、私とで本当に大丈夫なんですか?“
どうしてこんな事を聞くのだろう、大丈夫じゃなければ君を誘ったりしない。
“当たり前だよ、その為に火曜日に休みも取ったんだ“
“だめ、かな“
このまま断られたらどうしようという不安が君とやり取りが出来ている嬉しさの上に重くのしかかる。既読は付いたけど次の返事が来ない。
...嫌なのかな、君ともっと会いたいと思っているのは僕だけなのかな...
「......」
~♪
“だめじゃないです、いいですよ“
”良かった、ありがとう!詳しいことはまた近くなってから決めよう”
”りょーかいです”
「...はあああ...良かった...」
最後にあの子からの”楽しみにしてます”という柴犬のスタンプを見て、僕はようやく安心することが出来た。深く息を付くと、またソファに倒れ込む。後は当日、もうひと頑張りだ。
最初のあの子の反応が、ちょっとだけ気にかかるしまだこの気持ちを定めてしまって良いのかも分からない。けれどこのままではいたくない。
「...格好良く、決めないとね…」
それよりももっと悩ましい状況になっていた事に僕はまだ気づかないまま、当日に思いを馳せていたのだった。