第4章 覚悟を決めて伸ばした手は
あの街での遭遇(といっても長船さんは気づいてはいないが)から、どう接して良いのか分からなくて連絡を途絶え気味にさせていた。
だって、相手が出来ているなら迷惑じゃなかろうか...。いや友達に恋人ができた所で付き合いをやめたりはもちろんしないんだけど、ほら、私と長船さんは異性であって同性ではない。
いくら気の置けない仲間とはいえど性別の違いは弊害だと思うんだ。
「......はあ」
なんとも情けない。どうしてこんなにダメージを受けているんだろう、長船さんの幸せは私の願いだった筈なのにいざ目の当たりにするとこんなにも...。もう本当になんでだ!なんでこんな私はショックなんだ!あれか!自分にちょっとでも長船さんの相手になれるかもという期待でもあったのか!馬鹿か!...馬鹿か...。
~♪
誰もいない休憩室で悶々としているとメッセージアプリから通知が。
「...長船さんだ...」
よりによって彼からとは。
直前のメッセージは私が既読を付けたままやり取りを止めていたはずだ、今までの流れはお互いが交互にまさに会話をするそれのように交換をしていたから私が返す前にメッセージが来ることは珍しかった。直ぐに見るべきか、時間を置くべきか...。
いや、無理だわ。気になって仕事どこじゃなくなる...ここは素直に見ておこう、とアプリを立ち上げた。
“お疲れ様!譲って貰ったのだけど、良かったら一緒に行ってくれますか?“
トークに現れたものは、簡単だけどどこか遠慮がちなお誘い文と水族館のチケット2枚が写った画像だった。
「...なんで...?」
おわかりいただけるだろうか、恋人が出来たであろう相手から突然のお誘いのメッセージ。混乱しない方がおかしいではないだろうか。
“お疲れ様です“
“え、私とで本当に大丈夫なんですか?“
もうこう返すのが精一杯だった私の気持ちを分かって欲しい。