• テキストサイズ

人生は常に事件に満ちている【コナン】

第8章 読めない彼 【安室】





初来店から、彼女は度々ポアロを訪れるようになった。









毎日来ているのではないだろうかという頻度の彼女、十華。十華が注文するのはいつもコーヒーのみだった。アイスかホットかは日によるが、いつの時間に来てもコーヒーしか頼まない。昼食時になってもコーヒーのみだった。梓にきけば、安室が休みの日もやはりコーヒーのみで、滞在時間は安室がいる日よりも短いのだという。本当に“安室のコーヒー”を飲みに来ているということがわかるのだが、安室はそんな彼女が少々心配になった。
「…あの」
「ん?」
突如斜め上から声を掛けられて、十華は読んでいた新聞から顔を上げて安室を見た。
「すみません、余計なお世話かとは思うのですが、いつもコーヒーだけですが、お食事は…?」
「んー、大丈夫、です。普段もそんなに食べないし」
「けど、もたないでしょう?」
「うーん…」
十華は少々困った様な表情を見せた。これは本当に、食べなくても大丈夫なのかもしれない。だが安室は自分からは退かず、十華の答えを待った。
「それじゃ、せっかくだからいただこうかな。あんまり量無くていいんで、おすすめで」
「はい!かしこまりました!」
にこ、笑って背を向ける安室を十華は見送った。世話焼きなのかなと思ったが、心配してくれたのは、純粋に嬉しかった。
(もうみんな慣れちゃったものねぇ)
頭に浮かぶのはFBIの近い面々。それだけしか食べないのか、と言われることがあるが、頷くとそれ以上何も言われないからである。それがもう定着してしまったのだ。十華はちらとカウンターの方を、自分の食事を用意してくれている安室を見た。
(思い過ごしだったかな?)
彼からは何か“自分と同じもの”を感じた気がしたのだが。
(まぁ、害がないなら答えを急ぐ必要もないか)
思ってコーヒーを一口。「うん、おいしい」と頷くと、「ありがとうございます」と声が掛かって、安室がテーブルに皿を置いた。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp