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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第5章 沖矢昴という男 【安室】


FBIきっての切れ者、赤井秀一の死から二週間。FBIの面々も、まだまだ続く黒の組織との戦いの為、赤井の死を乗り越えて前を向いて歩こうとしていた。ただ一人、青黛十華を除いて。十華は赤井が死んだという事実を信じていない。確証の無い思いと疑問点だけではあるが、十華は自分のそれの方を信じていた。自分の相棒、FBIの中でも最高クラスの赤井秀一が、そう簡単に死んでやるわけがない。指紋が一致したと言われた時の言い方も気になる。周りには死んだと見せかけて、実はどこかに潜んでいるのかもしれない。だとしたら会えて探すことはせず、時が経つまで待つことにしよう。そう思いながら、彼女は歩いていた。そしてふと辿り着いたのは、阿笠邸や工藤邸のある通り。完全に無意識に歩いてしまっていた。この辺りに用がある訳では無いし引き返すかと顔を上げた時、工藤邸の前に、すっかり見慣れてしまった少年がいることに気づいた。
「コナンくん?」
「あ…青黛さん」
コナンは十華に気づくと目を瞬かせた。そして若干焦ったように、ちらと工藤邸の玄関の方を見る。なんだろうと思い十華がそちらに顔を向けると、見たことの無い青年が工藤邸から出て来た。
「彼は…?」
「あ、と…沖矢昴さん。この間近くのアパートが火事で燃えちゃって、行くとこが無いからってここに…」
「…ふぅん」
コナンとここ工藤家の主は親戚だというから、コナンが勧めたのかもしれない。だが見ず知らずの男を、今は誰も住んでいないからといって親戚の家に住まわせるだろうか。十華はその沖矢昴という青年を見つめていた。何か、引っかかる。雰囲気、空気、気配といった、感覚的なものにすぎないのだが。
「おやコナンくん、そちらの方は?」
「青黛十華さん。FBI捜査官なんだよ!」
「ホー…FBI、ですか」
ピク、と反応したのは十華の方だった。この男、何かある。通常FBIの素性はそう明かしていいものではないのだが、コナンがすぐさまFBIだと教えたのも意味があるのかもしれない。
「今この家に住まわせていただいている、沖矢昴です。よろしくお願いしますね」
言って差し出されたのは、左手。十華はその手を見て、わずかに目を瞠った。
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