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黒か白

第8章 女優と探偵


Another side

昨日の天候で柄にもなく昔のことを思い出していた。
昨日と同じ風の強い日、フランスでの日本人との思い出。
今後日本での活動も多くなるであろうことは予測がついていた。
そのためにも日本人と関わりを持つことは有益だろうと考え、まず思い浮かんだのは有希子の存在であった。
しかし彼女は「シャロン」の友人であり「クリス」の友人ではない。
「友人」を作るのであれば同年代に越したことはないだろう。
以前、「クリス」と年の近い姪の話を聞いたことを思い出し、お目付役として紹介を受けることを思いついた。
そう、最初は利用できるものは利用する、それだけのつもりだった、彼女の純粋さを目にするまでは。
話せば話すほど彼女は真っ白で、己の汚さが浮き彫りになるようだった。
純粋な女は好きではない。
「新しい友人」はキラキラとした目で生々とした声の持ち主で、私が返事をするまで話しかけてきた。
鬱陶しい、そう思っていた。
ちょっと返事をしてやれば黙るだろう、そんな思いで返事をすると、あまりにも嬉しそうにするものだから、まるで自分も彼女と同じ世界に居る、そう錯覚させられるようで、ついつい次々投げかけられる質問に答えてしまっていた。
気に入ったのだと思う。
純粋だった頃の自分を思い起こさせて…
もう戻れないあの頃に戻れたようで……
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