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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第8章 原作編《林間合宿》


紫沫SIDE


出席番号順ということはバスに乗るのは一番最後。
クラスの人数が奇数だから2人がけのバスでは自ずと1人になってしまうのは予想していたけど、まさか通路を挟んで先生の隣しか空いていないとは…

「一時間後に一回止まる。その後はしばらく…」
「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」
「バッカ夏といやキャロルの夏の終りだぜ!」
「終わるのかよ」
「ポッキーちょうだい」
「しりとりのり!」
「りそな銀行!う!」
「ウン十万円!」
「ねぇ、ポッキーちょうだいよ」
「席は立つべからず!べからずなんだ皆!!」

後ろから早速クラスの皆の騒ぐ声が聞こえてくるけど、一番前の席に1人で座っていた私は話しかける相手も後ろを振り向いてその輪に入る勇気もなくて、一時間どうやって暇を潰そうかと窓の外に目を向ける。
流れる景色をひたすら眺めていたら、後ろに誰かの気配がして振り向くと。

「隣いいか?」
「焦凍君?いいけど、どうかした?」

青山君と座っていた筈の焦凍君の姿があった。
特に断る理由もないし、むしろ大歓迎だ。

「隣に座ってた青山が気分悪いみてェで、寝かせる為に席移動してきた」
「え?大丈夫?」
「ああ、寝てりゃ大丈夫だろ」

思いがけず焦凍君が隣に来てくれたことと、1人で暇していたことも相まって嬉しさから頬が緩んでしまう。
そんな様子を見抜かれたのか焦凍君がこちらを見て言葉を続けた。

「寂しかったか?」
「え?」
「周りは騒がしかったが、紫沫は静かだったろ」
「ぁ…寂しかったの、かな」

自分では暇を持て余している感覚だったけど、そう言われて寂しかったのかもと思った。

「でも、焦凍君が隣に来てくれたからもう寂しくないよ」
「ああ。顔見りゃわかる」

そう言った焦凍君の手が確認でもするように私の頬に伸びてきた。
焦凍君の掌に包まれて、親指が軽く頬を撫でる。
私は大好きな温もりが心地良くて、自然とその掌へと頬を擦り寄せていた。


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