第13章 Ti desidero.【ジョルノ】
「たッだいまァ〜〜〜!チヒロ、戻ってるかぁー!?オレ喉渇いちゃってさあ、オレンジジュースあるかなァ〜ッ?」
ドタドタドタ、という足音と共にナランチャの大声が響き渡り、2人は固まる。
その時のジョルノの顔といったら、眼だけで人を睨み殺せるというのはこういう事なのかもしれない、とチヒロは思った。
「あれェ?なんだチヒロ、ジョルノも!居るんじゃあねえかよーッ!なら返事しろって」
ひょいと顔を出したいつも通りの無邪気なナランチャに、彼女の頭も急激に冷えていく。
「ご、ごめんねナランチャ!お帰りなさい。オレンジジュースよね?確か冷蔵庫にあったと思うわ」
「ホントか!やりィ〜ッ!」
なんとか自分も、"いつも通り"の返事ができた…と思う。
彼女の赤い顔には気づかなかったようで、早速ガチャガチャと冷蔵庫を漁る彼。
続いて他の面子も戻ってきたらしく、玄関先がにわかに騒がしくなる。
いつも通りのメンバー達。
いつも通りの日常。
さっきまでの事が夢だったんじゃあないかと思えてくる。
が、
「チヒロ……この続きはまた今度、ね」
耳元で囁かれたその一言に、ひとつの"いつも通り"が儚く消えた事を思い知った。
END