第13章 Ti desidero.【ジョルノ】
兎にも角にも毎日がそんな調子で、これで普段通りに振る舞えという方が無理な話だ。
ちなみに"無理な話"だというのはチヒロに限っての事で、ジョルノの方は至って平然と過ごしているのもまた腹立たしい。
先述した理由達を、他のメンバーが誰もいない時だけを見計らって仕掛けてくる、その巧みさには舌を巻く。
おかげでチヒロの挙動だけが不自然なものとなり、この前はとうとうブチャラティから
「最近何か心配事でもあるのか?」と気遣われてしまった。
ううう、と彼女はひとり頭を抱える。
ダメ、ダメ、意識しちゃあダメ。
ジョルノはただの後輩なんだから。
まだ入団して日も浅い、ナランチャよりもフーゴよりも年下のチームメイト。
そう、それだけよ。
"いつも通り"でいればいいの。
私は先輩として恥ずかしくない振る舞いをしなくっちゃあ───。
ワン!ワン!
突然足元から甲高い鳴き声が聞こえて、ハッと我に返る。
市街を見回っていたチヒロに、散歩中の小型犬がじゃれついてきていた。
「コラッ!いけませんッ!ほほほ、ごめんなさいねェ〜、この子ったら…コラ!」
犬のリードを引っ張るいかにも金持ちそうな身なりの婦人に、お気になさらずと返事をしながら彼女は自省した。
いけない、ぼーっとしてた。
今は1人だというのに、それも見回りという仕事の最中なのに、こんな時までジョルノの事で頭がいっぱいだなんて。
これじゃあまるで─────
そこまで考えて、次の言葉が浮かんでくるのを頭を振って打ち消した。
ああッ!しっかり!しっかりするのよッ!私ッ!!!
突然髪を振り乱して暴れ出した女を、犬を引きずった婦人が薄気味悪そうに見つめていた。