第12章 Regalo【アバッキオ】
翌朝。
ため息を吐きながら街を歩く。
小鳥の囀りも、春の到来を感じさせる陽気も、オレの気分を晴らす材料にはならない。
ふと、アジトの方に向かいかけていた足を止める。
…そうだ、今日は馴染みの店に集まると言われていたんだった。
柄にもなく呆けていたらしい。
最近の自分はどうかしている。
おかしいのはアイツじゃあなくて、オレの方かもな。
自嘲しながら歩みを進めたオレは、リストランテの扉を押し開いた。
いつもの席にもう皆集まっているのが見える。
ずいぶん早えな……
「アバッキオ!おめでとォーーーーッ!!!」
「…あァ?」
オレを見た途端、ナランチャがやたら嬉しそうに飛び跳ねて、呆気に取られてしまった。
「"あァ?"って何だよッ、今日アバッキオの誕生日だろォ〜!」
「た……ッ!?おい、今日何日だ!?」
「3月25日に決まってんだろォ〜…何だよアバッキオ、お前もしかして自分の誕生日忘れてたのかァ?」
慌てて日付を確認するオレを、ミスタがニヤニヤしながら眺めている。
元々誕生日なんて気にする方でも無かったが、今年は特に…それどころではなくて、全く意識の外だった。
「せっかくなのでこの店で、というのはブチャラティのアイディアですよ」
横からフーゴも口を挟む。
その横でジョルノも微笑んでいる。
ああくそ、どうにもこそばゆい。
慣れてねえんだ、こういうのには……
何とも言えず視線を彷徨わせていると、すいとオレの前に進み出たヤツがいた。チヒロだ。