第12章 Regalo【アバッキオ】
そして今日だ。
オレがいるテーブルから離れた部屋の隅で、ミスタとチヒロがひそひそ喋っている。
よほど会話に夢中なのか、オレの視線にも一向に気付く様子がない。
今日のチヒロは一転して晴れやかな顔をしていて、嬉しそうにミスタに笑いかけている。ミスタも楽しそうに相槌を打つ。
……ああくそ、何だってんだ、ちくしょう。
おいチヒロ、お前、以前オレが話を聞いてやった時は「アバッキオには何でも話せる」とか何とか言ってなかったか?
「また何かあったら聞いてくれる?」とも言ったよな。
…確かにオレはあの時、時間がありゃあ聞いてやる、とは言ったがな………今回だって、大丈夫かどうか尋ねたろーが。
何かあったなら、何でオレに相談しねえんだ。
オレに言わねえくせに、ミスタには話すのか。
いやミスタやフーゴだけじゃあねえ、ナランチャやジョルノと同じように立ち話しているのも何度か見かけた。
アイツらに話せて、オレには言えねえ事ってのは何なんだ?
ガタン。
大きな音を立てて椅子から立ち上がったオレを、2人が驚いた目で見つめている。
………最悪の気分だ。
部屋を出たオレは、そのままアジトを後にした。