第75章 コンプレックス 9

　同日午後

　翔side

　今日は厄日だ……

　10年前に父と離婚した母が、会いたいと連絡してきた

　同じ日に…… ナンデ？　

　母親のマンション

　翔歌「翔ちゃん…… 私に経済力や発言力がなくて、あの人に親権や養育権を渡すしか無かった。本当ごめんなさいね。寂しい思いをさせて。この10年間、翔ちゃんと、また暮らすため保険会社で営業の仕事しながら…… ようやく…… あの人から翔ちゃんの親権と養育権を…… 取り戻すわ!　だから翔ちゃん、櫻井の姓にならない？」

　翔「ぇ？」

　何でって…… ずっとずっと


　僕は僕の存在価値を考えて来た

　嬉しい筈の母の言葉……


　けど……

　翔「少し…… 考えさせて……」

　翔歌「翔ちゃん？」

　お母さん、驚いてる

　ホントは僕だって、お母さんと


　他の人はさ


　頑張って

　表ではね　

　言うけどさ裏ではさ

　思ってって無いよね

　ずっとさ……　思ってたけど




　ゴメンね…… お母さん


　智side

　〇〇病院

　大野智羽《サワ》様

　智羽「智くん？　何か楽しそうに見えるのって気のせいかしらね？」

　智「ウフフ、だって楽しいもん!」

　智羽「なあに？　（笑） おかしな子ねぇ。変な笑い方して」

　うん。オイラ自分でも浮かれているって、自覚ある（笑）


　赴任して1ヶ月、勉強会から一週間

　オイラだけじゃなくて、色んな人の人生が動き出しそうな予感に、ワクワクしてた

　母さんにも、優しく接する事が出来そう

　そう思ってたんだ


　この時翔が苦しい思いをしていたなんて……