蝶よ花よ〈甘い蜜に誘われて〉(気象系.信号トリオ.BL )
第87章 花(華)の屋敷 5
茶の間
サトシ「そなた名前は何と申す? 私に話しとは?」
さて、残された私とこの男、望むと望まざるとに関わらず、共にショウを見送ることになったのだが……
カズ「お聞きしたい事がある」
そう言われ
フム、私も確かめたい事があるし…… と茶の間に通したのだが
カズ「人に名を尋ねる時は、まずは己からと、習いませんでしたか?」
ニヤリと、人を食ったような表情の青年に
サトシ「フン、確かに…… しかし、初めにものを尋ねて来たのはそちらではないのか? その際、そなたこそ先に、名を名乗るべき? だったのではないか? あぁ失礼、私はサトシと申す」
同じようにニヤリとして返す
しばらく睨み合いを……
久方振りに
と、しかし、次の瞬間私は……
サトシ…… と名乗った男
久方振りにシャレの通じる奴に出会えた
と、感じいったのだ…… だから尚更の事っ、私は解せなかったのだ
カズ「失礼は承知の上申し上げるのです。貴方はショウ様との会話から察するに、この様な仕事を、生業とするのを良しとしないと見受けられるのに…… 何故ショウ様が…… 」
サトシ「待った! この様な仕事?」
カズ「あ、失礼な物言い、許して下さい。私が言いたいのは……」
まずった……
私はハッキリ言って、この手のことは許せない人間だ…… しかし
サトシ「こちらこそ済まない。案ずるな。そなたが好きでここに来たのではないのは、見て取れる。責めているのでは無い…… 確認だ」
私は漠然と、何かがおかしい? と感じていた
私が幼き頃、祖母から繰り返し聞かされた話。その事に対して、母が時折話そうとするのを
私は聞く耳を持たないで来た……
その事と照らし合わせると……
この『花屋敷』には、いわゆるその手の雰囲気というものを感じないのだ
私がこれまで事実と思ってきた事は
間違いなのか?