第2章 ✼藤✼
時を同じくして、安土でも急な豪雨が降っていた。
§ 結Side §
「うわぁ…急に降って来たね」
信長様から頼まれた文書を届けるために秀吉さんの部屋に来ていた私は、秀吉さんとたわいもない世間話をしていた。
「本当だな。女中が外に出てないと良いが……」
サラッと女の人の心配をするんだからこの人はズルい。
天然の女たらしだから多分深い意味は無いんだろうけど……
この城には秀吉さんに恋する女の子が沢山いる。それは私がこの世界に来た時から変わらない。
もしそんな恋する乙女が雨に濡れて帰ってきた時
「外にいないか心配してたんだが案の定か…」
とか言われてみろ。
私のことを心配してくれた、とますます好きになってしまうに違いない。
(秀吉さんの彼女になった人は嫉妬の嵐なんだろうなぁ…)
目の前のイケメンに苦笑を漏らした時
──ドカンッ!!!
かなり近くで雷が落ちたような音がして、肩がビクッと震えた。
「秀吉さん…今の結構近かったよね?」
「そうだな。しかもかなり大きい雷だった」
これはとうとう苦笑している場合ではない。
本当に外に女中さんが出ていないか心配だ。
(でも…この感覚、私知ってる気がする)
急に雨雲がたちこめ、大きい雷がすぐ近くに落ちる。
まるで……
「ワームホールみたい……」
独り言のつもりで呟いた言葉はうっすらと秀吉さんの耳に届く。
「何か言ったか?結」
「あ、ううん!何でもないよ!」
でも佐助くんからはワームホールが近々出現するとは聞いていない。
(私の思いすぎかな?)
少し心配になりながらも部屋の外へ出ると、先程までの天候が嘘のように雨雲が消え始め、雲の隙間から太陽の光が差し込んでいた。
「何だったんだろうな、今の。通り雨にしては凄すぎるな」
「うん……」
ワームホールは不定期に観測されるため、佐助くんが把握出来てなくてもおかしくない。
どちらにせよ、今私は戦国時代に残れているわけだし大丈夫だろう。
(後で佐助くんに聞いてみよう)
「念の為城の外の様子を見に行くが、お前も行くか?」
「あ、うん。じゃあ行こうかな」
二人で縁側を歩いていると、向かい側から一人の家臣が秀吉さんの元へ駆け寄ってきた。