第3章 別れはすぐに訪れる
禿(かむろ)として日々を過ごし、
器量良く育ったももは
歳頃で遊女となるところだったが、
恐ろしくなり逃げてきたというところだ。
『嫌。絶対に逃げ切ってやる』
賑やかな場所を背に、静かな方へ向かって歩き続けると、やがて雨が降ってきた。
幼い頃から吉原に居たももは、
何も知らなかった。
(今まで私は、大嫌いなあの場所で、
守られていたのかもしれない)
そんな風に思ったが、
やはり脳に焼き付いた姉様たちの姿が
離れなかった。
私はあんな人生は嫌。
もっと自由に生きたい。
雨に打たれ、ずぶ濡れになりながら
歩き続けた。
ももは疲れ果て、人気のない山道に座り込んでいた。