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月下香の蛇

第2章 演練と狐


ぼうっと天井を見上げる。
腰が痛い。
体中が痛い。
ミシミシと軋んでいる気がする。
右手の甲はジンジンと痛むし、口の中は鉄の味一色。
「はぁ…」
深く息を吐き出せば
「ぬしさま、」
天井だけの視界に小狐丸の顔が。
ギュウっと抱き着かれて、首元に頭を埋める小狐丸。
スリスリと頭をこすりつけて、甘えている素振りだろう。
「どいて。
風呂に入りたい」
隠す事も無く伝えて、
大きな体をどけようとすれば
「嫌です。
ぬしさまには小狐丸の匂いをつけたのですから」
首元からくぐもった声で返事が。

「誉の褒美にしては、随分ね」

「私を嫌いになられましたか?」
「下らない質問」
「ぬしさま、
私はぬしさまを好いております。
私をぬしさまのモノにして頂きたいのです」
あんな事をしておいて、
すがる様な声で小狐丸は言う。
「何を今更。
貴方を顕現させたのは、私でしょう」
「はい」
「貴方の主は私なのでしょう?」
「無論です」
「ならば、それが答えね」
私が言えば、小狐丸の腕の力が強まった。
「今夜一晩だけ。
貴方の匂いに染まっていてあげる。

朝になったらその腕離しなさい」
疲れた私はそれだけ言うと、眠る事にした。

目を閉じた向こう側で小狐丸がどんな顔をしていたのか
私は知らない。
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