第6章 濡れ羽色した少年のキモチ
(それにしても・・・)
大広間の片隅で、高みの見物を決め込んでいるフードの男。
時の政府からの監査官ということで何度か見かけたことはあったけど。
ちょっと妙というか・・。
(・・・・とりあえず山姥切、ガン見しすぎじゃね?)
なにがそんなに気になるのか、山姥切は基本ずっとマントの男を見つめている。
相手もそれに気付いて、あからさまにイライラしてるし。
鯰尾「はいはーい!しつもーん!堀川さんは前の主から一体どんな任命を授かったんですか?」
堀川「それは・・・」
一瞬、堀川の目が陰る。
(そりゃ言いにくいよなぁ・・・)
主を殺しに来た、なんて。
一瞬、堀川と目が合ったから、笑って手を振ってみた。
堀川「・・・僕の命じられた使命は“刀剣男士が誰か一人、傍にいる状態で主を殺せ”という内容です」
真っ直ぐに、堀川が顔を見上げて告げる。
鶴丸「お、驚いたな・・。そんな命を主が言ったっていうのか?」
燭台切「にわかには考えられないけど・・・」(ウーン)
一同がざわつく。
一方、律儀に反応する気のない俺は爪の甘皮を整えていた。
(・・俺としては堀川を人殺しの道具として使ったことより、自分の命を他人事のように扱った主のほうが信じられないんだけどね)
それに気付いているのか、いないのか。
主は普段の声音で話している。
「それについては私自身の話しになるからいろいろ思うところがあるんだけど・・・。とにかく記憶がないから何も言えないのよね」
今剣「あるじさまには前世の記憶はないのですか?」
「うーん・・・心当たりがある程度かな」
小夜「・・・じゃあ、主は堀川さんのしたことを許すの?」
小夜左文字の一言が場を沈めた。