第7章 少年と虎
「はー、食った!」「もう茶漬けは十年見たくない」
「お前・・・。」
敦は満足そうに言い、それを聞いた国木田は顔に青筋を浮かべた。
「いや、ほんっとーに助かりました!孤児院を追い出され横浜に出てきてから食べるものも寝るところもなく。・・・・・あわや斃死かと」
「ふうん、君 施設の出かい」
「出というか…追い出されたのです。経営不振だとか事業凝縮だとかで」
「それは薄情な施設もあったものだね」
「おい、太宰」
「俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ」
「お三方は何の仕事を?」
「なぁに…」「探偵さ」
敦はよくわからないとポカンとした顔で太宰を見た。それを見ていた国木田は舌打ちをしながら説明を補足した。
「探偵と云っても猫探しや不貞調査ではない。斬った張ったの荒事が領分だ。」
「敦君、君は異能力集団『武装探偵社』を知らないか?」
それを聞いた敦はハッとした顔で三人を見た。
『武装探偵社』
曰く 軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする探偵集団
昼の世界と夜の世界
その間を取り仕切る薄暮の武装集団
『武装探偵社』の社員は多くが異能の力を持つ『能力者』である
太宰とユウリは何かを見つけたようだ。
「あの鴨居頑丈そうだね、治」
「本当だ、たとえるなら人間一人の体重に耐えれそうな位。」
「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな!(怒)」
「「違うよ。首吊り健康法だよ。知らないの?」」
「何!あれ健康に良いのか?」
国木田はアッサリと信じた。
「そ・・それで、探偵のお三方の今日のお仕事は?」
「虎探しだ」
「・・・・虎探し?」
「近頃 街を荒らしている『人食い虎』だよ。倉庫を荒らしたり畑の作物を食ったり好き放題さ。最近この近くで目撃されたらしいのだけど」
ガタッ!!
敦は椅子から転げ落ち怯えた表情をして逃げようとした。
「ぼぼぼ僕はこれで失礼します」
それを国木田が制した。
「待て」
「む無理だ!奴 奴に人が敵うわけない!」
「貴様『人食い虎』を知っているのか?」
「あいつは僕を狙っている!殺されかけたんだ!」
「この辺に出たんなら早く逃げないと」
次の瞬間、国木田は足払いを掛けて敦を拘束した。