第7章 イカれた帽子は兎と歌う
「行くぞ」
イチを守るようにダークシャドウが両手を広げて威嚇したが、爆豪が掌から火花を散らすと涙目になって引っ込んでいった。
どうやら体育祭のトラウマは消えていないようだ。
「何処行くの?」
ダークシャドウを慰め立ち上がるイチに「さっさとしろ」と背を向けると、再び玄関に向かって早足で歩く。
18:18
何処に行くんだと、切島が肩を掴むと「許可はとった」と爆豪はその手を払う。
基本校外への出入りは門限までは自由だ。
しかし爆豪の件もあり特にヒーロー科は安全性を重視されている。かと言って、行動を制限し過ぎる事はなく、外へ出かける時は相澤(担任)に告げる位であった。
「許可って、もしかしてかっちゃん、今からアイ……
「うっせぇクソナード!黙ってろ!」
爆豪の真意にいち早く気づいた緑谷が訪ねようとすると、直ぐに遮られた。油を注ぐ事しか出来ない様だ。
だがそのやり取りで一同は状況を把握し、空気が少し緩和した。
素直に誘えばいいのに。
芦戸や葉隠を筆頭に、女子はとっさに保護したイチを爆豪の元へ離した。
「……なにニヤニヤしてんだテメェ等」
何がトリガーになるか分からない。
これ以上はマズいと、一同は状況を把握しはしゃぐイチを見送った。
18:35
少し早く届いた夕食を食べながら再び談笑。
美味しいご飯と大勢で食べる食事。
これも寮生活の醍醐味である。
「私達もアイス食べに行きたかったよねー」
「そうなんだけど。でも…ねぇ?」
「だよな。なーんか、2人で行かせてやった方が良いなって思ったんだよな」
「そうね。爆豪ちゃん素直じゃないから、2人の方がお話しやすいんじゃないかしら?」
「ダークシャドウも怯えてしまったしな」
「…じゃあ、明日から授業後はイチ君を連れて、近くに何か食べに行くのはどうだろう?」
「飯田あったまいい!それイイね!」
「はっ、アイツと轟連れてたら年上のお姉さんが寄ってくるんじゃねぇか…!」
「確かに!よーし今人気の店は任せろ!」
「…俺は小豆アイスがいいな」
「まぁ、轟さん渋いのがお好きなのですね」
「2人とも明日もアイスって決まったわけじゃ…」
仲良く帰ってくればいいけど…