第5章 キャンディをどうぞ
光の後立て続けに爆発がおきた。
一瞬で爆風が生まれ、イチの後ろにあった塀は吹き飛んだ。
(相手の視界を奪い、距離をとって最大火力を叩き込む。相手の個性が分からない時に突っ込むのはデメリットが大きい。だがコレは短期勝負)
「……まぁ、悪くねぇ策だな」
「アイツまじかよ!」「イチくんっ?!」
「ひえええぇぇ〜」「っどこだ!?いねぇぞ!」
「……上だ!!!」
「……ケホッ」
緑谷の声に全員が上を確認する。
イチは体を小さく丸め頭上高く上がっていた。着ていた黒の半袖のツナギは所々焦げ、下の肌が露出している様だ。
空中に飛ぶのを見計らったように、爆豪が飛び上がり不安定なイチに襲いかかる。
(勢いのついた右の大振り……!
僕にしか分からない癖だけど初見なら有効だ!)
「っオラァア!!」
不安定な空中戦。イチは左腕で受け流し素早く体を逆に曲げ、爆豪の肩を足場に体を回転させ後ろから足を振り下ろした。
今度は爆豪が地面に吹き飛ばされると、それを追いかけイチが突っ込む。爆豪が素早く起き上がると、今度は互いに真正面から受け止めた。
最大火力
時間は短い、もうさっきの火力は出ない…。
地上戦主体の肉弾戦に変わる!
攻防が続く。
時計は残り1分をきる。
爆豪は身を屈め右手で爆発を起こした。よろけたイチが左手で地面に手をつくと、上から拳をを振り降ろした。
―――とった……!
その場にいた全員が思っただろう。
しかし振り下ろした爆豪の左拳は弾かれると、イチが跳ね上がるように起き上がった。
次の瞬間重い音と共に爆豪の体が跳ねた。
「……ッ…ガッ…ッハッ………!」
抱きつくようにイチの左手が腰に添えられ、右拳が爆豪の腹部に正面から入ると、間髪入れず右足を軸に回転して左の回し蹴りが入る。
(僕に教えてくれた足技の逆…!)
左側に爆豪が吹き飛ぶと、それを追いかける様にイチは走り出す。
「そこまでだ」
時計はゼロを示し固まっていた。
「アッ、やべっ」
いつの間にか2人の間にウェンウィルが立つと
今度はイチは右に勢いよく吹き飛んだ。