第4章 持ち続けるべきこと
「ハァァァ…………疲れた」
大きなため息と共に上鳴は寮にあるソファに深く腰掛けた。
出来たばかりの寮は、何処もかしこも綺麗で気分はホテルに泊まりに来たお客様状態。
そんな中、憩いの場として設置されたソファは、初日から役割りを発揮し皆が良く集まっていた。
「確かに今日は色々急展開すぎて、違った意味でも疲れたよな」
風呂から出た切島は、アイスを食べながら今日の出来事を思い出して上鳴の隣に腰掛けた。
「俺は別で備えてたけど、上鳴と麗日はがっつりだったもんな。
なぁ、やっぱ相澤先生まで止めに入る位だから相当ヤバかったのか?」
上鳴は目を見開き、手で顔を覆うと腹の底から絞り出して声にした。
「マジで死ぬんだと思った……………」
緑谷達を挟んでだったが、恐怖を感じるには充分な距離であったのだろう。
震源地=上鳴は体もソファも切島も揺らした。
「お茶子ちゃんも良く耐えたわね」
2人の向かいに座っていた蛙吹は指を口にあてながら、隣に座るお茶子に声をかけた。
「いやぁ、私なんにも出来なくて。
イチくんも逃げちゃったし、服は切られるわで、散々だったよ」
「でもあの場に逃げずに居たのは、凄く勇気がいる事よ」
「そうかな。ほら、でもデクくん達3人はもっと怖かったと思うんよね」
アハハ、と半笑いしながら、お茶子は手を頭に当てた。
「いや、逆だろ〜。やる気スイッチMAX押された感じバリバリだぜ、現に3人とも未だに自主練やってるし。
特に爆豪。マジであいつ午後怖かったわぁ、あれは何かしでかすぜ」
上鳴が不吉な予想をたてると、蛙水が配られたスケジュールを取り出し隣のお茶子と見直し始める。
「明日は……必殺技の訓練ね。1日置きに特別訓練で、仮免前日はお休みで、約10日間のスケジュール」
「うーん、仮免まであっという間やねぇ」
それまでに柔術のコツを掴む!と、正拳突きのポーズをしてみる。沈めるサンドバッグのノルマは1日10体だ。
「そうだよな、短い期間だしな。何にしても、全力で仮免までやるっきゃねぇな!!」
切島は率直な感想を述べると、ふと点呼まで時間が迫っているのに気がついた。
もうすぐ点呼が始まる。
「あいつらに言ってくるわ」そう言い残すと外へと出ていった。