第4章 Chapter4【賑やかさと食費が割増】
毛利さん達へ麦茶とお皿に乗せたロールケーキを配り、何気なく思い付いた「時間が止まっている可能性」について話をしてみた私。
すると、まだ確定は出来ないがその可能性が高いという結論になったようで…………
「なっ、何という甘い匂い……!!これはもしや、南蛮の甘味……!!?」
「えっと、これはロールケーキです」
「……ろおるけえき、でござるか……」
お皿を受け取るや否や、まじまじとロールケーキを眺める赤い男性。
その様子が気になったため甘いものが苦手なのかと尋ねれば、彼はブンブンと勢いよく首を横に振って否定する。
よかった、毛利さん用に多めに買っておいて正解だったらしい。
「………………あのさ、さっきはごめん」
「……え?」
不意に、迷彩服の男性がどこか落ち着かないように目を泳がせながら私に頭を下げた。
……何か謝られるようなこと、ありましたっけ……?
「俺様は仕事柄、どうしても疑わずにはいられなくてさ……ここには戦がないって毛利の旦那が言ってたし、怖がらせちゃったでしょ?」
「あぁ、そのことでしたか……」
赤い男性の叫び声のせいですっかり忘れていたけれど……
どうやら彼の謝罪の理由は、クナイらしきものを私に突きつけたことについてだったらしい。
そういえばそんなことがあったな、と思いながら私は首を横に振る。
「気にしないでください、毛利さんと初めて会った時も似たようなことありましたし……それに……」
「…………?」
ちらりと横を見れば、既にロールケーキを食べ始めている毛利さんとその毛利さんと私達を交互に見ながら食べるタイミングを必死に伺っている赤い男性が視界に入る。
……一刻も早く食べたいのだろう、ロールケーキを。
私が何を言いたいのか伝わったのか、迷彩服の男性が頬を引き攣らせながら笑った。
「……全く、旦那ってば食い意地張りすぎじゃない?」
「……ぬ、ぬぅ……」
「大丈夫ですよ。口に合うか分かりせんが、どうぞ召し上がってください」
「っ!!うむっ!!!!」
私が食べていいと言うと、赤い男性がぱああっと目を輝かせながらロールケーキを鷲掴みにして食べ始めた。
ーーーーこの後、それはそれは大きな声で「美味でござるぁああああ!!」と叫んだせいで耳がかなり痛くなったのは内緒です。