第3章 Chapter3【お酒は飲んでも飲まれるな】
【Side:毛利】
見慣れぬ物質、奇妙な武装、そして呆れるほどお人好しな我が駒。
この世界は我の世界とは異なるものばかりであった。
特にあやつの周りでは戦もなければ食糧難もない。
生い茂る緑は日輪の加護を受け、のびのびと育つ。
…………だからこそ、我は気掛かりだった。
「我不在の中国は、どうなっておるのだろうな」
「……中、国……?」
我の横で、酩酊状態にも関わらず酒を飲みながら首を傾げる駒。
この駒は下戸であった。
数口程度で酔い始め、我に向かってふにゃりとだらしのない笑みを浮かべおって……フン、我にその気がなかったから良いものを……
いつ襲われてもおかしくはない状況ぞ。
まあ、こやつは酒が入っていようが何であろうが、どうせ戦の話をしたところで何も分からぬ。
話をするだけ時間の無駄。
……だが、今の我は気分が良い。
貴様の言う「親睦」とやらに付き合ってやろうではないか。
「領主無き城ほど攻め落としやすいものはない。今頃は豊臣か、長宗我部が我が中国を支配しているやもしれぬ」
「それって毛利さんの国が……誰かに取られているっていうことですか……?」
「当然であろう?我の世は戦の世。こうして呑気に酒を飲んでいる間にも勢力図は乱れ、変化し、そして新たな戦が生まれる。……その繰り返しぞ」
「…………そんな…………」
大谷とはこちらに来る前の日の夜に同盟を結んだが、我がおらぬと知れば構わず攻め落とすであろう。
……ああ、皮肉なものよ。
我は中国と毛利の繁栄のためだけに策を練り、勝利を掲げてきた。
たしかにこの世は悪くは無い。住み心地の良さはこの上ない。
だが、あくまでも「悪くは無い」のだ。
…………そう、我が求めるのは…………
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あまりに長すぎて入り切らなかったため、とても中途半端な状態ですが次に続きます