第1章 chapter 1 -Recognition-
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『って!!ありえると思う?!』
「まぁまぁ、落ち着きなって。今まで散々逃げられてきてた結果 調査兵団預かりになったんでしょ?」
私は今朝あった出来事を同期であり同じ憲兵団に所属しているアメリー・バルトに行きつけのお店で話をしていた。
『確かに、今まで散々逃がしてきてるけど・・・
でも、次は絶対に!!!』
「ほんと仕事熱心よね~。」
『私が会議だったり他の事件を追ってる時に現れるから未だ会ったこともないゴロツキなの。それなのにバカにされてると思うと悔しいの!』
「そんなに仕事仕事だから今まで一個も浮ついた話がないのよ。
綺麗なのに勿体ない。
ハンナ、あんた他の憲兵の男兵士になんて呼ばれてるか知ってる?
’容姿の無駄遣い’よ?」
『それもそれでむかつくぅううう。』
わたしは手元にあった酒をぐびっと飲んだ。
「ま、わたしはそんなあんたが好きだけどさ。
たまには休むってことをしないと体持たないわよ~。
ほら、周りを見て。」
そういうとアメリーは店を見渡し私に顔を近づけ小声で話し始めた。
「壁の外は巨人がうじゃうじゃいるってのにこーんなに浮かれた奴らばっか。
いつ壁が破られてもおかしくないってのにこの世界は偽りの平和が全てだと思ってる。
100年破られなかったから安心だって。そう思い込んでる。」
『アメリー・・・どうしたの、突然。』
「たまーに怖くなるの。この壁って何でどうやってできてるんだろうとか。
なんで巨人は発生するんだろうとか。
でも、調査兵団に志願するほどの勇気がなかったのよね。
初めて巨人を見た時のあの恐怖・・・今思い出してもゾッとする。」
『・・・。』
「なのに憲兵団の仕事ってさ?本当の恐怖を知らない貴族たちを御守りしたり訓練兵団の統括、消防の指揮統制、駐屯兵団の監視、政治犯や犯罪者の逮捕や拘束じゃない?
名ばかりの仕事の奴も沢山いる。勤務中酒飲んでるやつなんて大半だし。
・・・自分で選んだ憲兵団だけどなにやってんだろーって思うことがある。
・・・なんてね。酔いが回っちゃったみたい」
そういうとアメリーはいつものかわいらしい笑顔を浮かべ舌をペロっとだした。