第1章 chapter 1 -Recognition-
『・・・またあいつらに逃げられた・・・?』
ハンナ・クラインは手渡された報告書を怪訝そうにぺらぺらとめくった。
『これで逃がすの何回目よ?!立体起動装置も盗られて!本当に舐められてるとしか思えないんだけど?!』
「す、すいませんハンナ副官。何せ動きが俊敏なもので・・・」
『言い訳は聞きたくない。・・・聞き飽きた!とりあえずこのことはわたしからナイル団長に報告するから。』
もう下がってと手をシッシとするともう一度報告書に目を通す。
『・・・ほんっと舐められてるよねー・・・。』
わたしははぁと頭を抱え息を吐くと報告書を手に持ち立ち上がった。
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ふぅと息を吐く。
コンコン
「入れ」
『失礼いたします。』
わたしは先ほどの報告書を団長室に持ってきていた。
・・・珍しいことに客人がいる。
『エルヴィン分隊長お久しぶりです』
そこには自由の翼を背負う調査兵団の分隊長、エルヴィン・スミスがいた。
「久しぶりだな、ハンナ。元気そうで安心したよ。
まだ、調査兵団に君が来るという知らせが私のもとには届いていないが?」
冗談交じりにエルヴィン分隊長はそう言った。
『エルヴィン分隊長もお元気そうで。
その件は丁重にお断りさせていただいたはずですが?』
「おい、エルヴィン。俺の前で堂々と裏引きとは。・・・よくやるよ。
どうした、ハンナ」
ナイル・ドーク憲兵団師団長はわたしの方を見るとそう呟いた。
『例のゴロツキ事件の報告書を持ってきました。
・・・今回も逃げられてしまい前回の報告書とあまり大差がないものですが』
わたしの言葉を聞くなりナイル団長は眉間にしわを寄せた。
「・・・ハンナ、俺は君の実力と頭脳を見込んでその若さで側近という座を君に任せている。」
『・・・はい。次こそは必ず・・・』
「・・・いや、この件はもういい」
『と、言いますと・・・?』
「そのゴロツキの件は調査兵団が受け持つ。」
黙って私たちのやり取りを聞いていたエルヴィン分隊長がそう言い放った。