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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第9章 The Winds Blow For You ※




その店は、何軒か路地裏に並んだ売春宿の中でも特に古びた店構えだった。
中からは酔っ払いの笑い声が聞こえてくる。

ドアの前では痩せ細った10歳くらいの少女が、ひざを抱えながらハンジをギロリと見上げた。
まだこんな幼さなのに、ハンジを客として値踏みしているように見える。
娼婦に産み落とされた子供は、生まれながらにして体を売る人生が定められているのか。

ハンジは堪らず、その子の手元に銀貨を数枚置いた。


中に入ると、そこは狭い酒場のようだった。
右手にバーカウンターがあり、左手の壁に備え付けてある長椅子に娼婦が座っている。
彼女達は、新客のハンジに買い取られようと扇情的な視線を投げかけてきた。

「いらっしゃい」

バーカウンターの向こうから、腹の出た男が声をかけてくる。
おそらく、この男がポン引きなのだろう。

「お客さん、見ねぇ顔だな? それにしても、今日は珍しく兵士の客が続くね」
「続く? ということは、私以外にも兵士がここにいるんだな?」
すると、男は脂ぎった顔に品のない笑みを浮かべた。
「ああ、上で“お楽しみ”だぜ。あんたはどの子を選ぶ? 一番右のは上玉だ、アソコの締まりがいい。その隣は歳食ってるが、しゃぶらせたら3分ともたねぇぜ。あぁ、でもアンタは・・・」
「悪い、私は買いに来たのではない」
「安心しな、女が好みじゃなければうちにゃ男もいる。今は出払っているが」
「いや、本当にいいんだ。上にいる連れをここで待たせてもらえないだろうか?」
するとポン引きはあからさまに嫌そうな顔をした。
一応、酒場のような店構えで、いかにも情事を終えたばかりという客が酒を飲んでいる。
しかし、女を買わない客などいても邪魔なだけなのだろう。

それでも相手は兵士だから、面倒は起こさないに限る。

「いいだろう、だが酒は注文しろよ。でなければ出て行ってくれ」
「わかった、一杯頼もう」

ハンジは出されたグラスを揺らしながらポン引きに尋ねた。

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