第3章 マスターって言ってほしい
「あのさ・・・」
私が言うと、クドクドと理由を話していたKAITOの口が止まる。
「もうブスって呼ばないで」
涙が静かに私の頬を伝っていった。風が吹いてそこだけひんやり冷たい。
KAITOの視線を感じる。泣いている姿なんて見せたくないのに目を閉じるたび次から次へと涙がこぼれる。
「わかった」
隣から少し低めに返事が聞こえてきた。私はKAITOの方を向いた。
KAITOは真剣な顔で私の方を見ていた。その真剣な眼差しに吸い込まれそうだ。
「・・・アルファ」
私の目を外し、俯きながら言う。って名前?私の名前いつ教えただろうか。ていうか、なんで名前??
「なんで名前なのよー!」
つい私は叫んで立ち上がってしまった。だっていきなり、ブスから名前呼びって・・・。普通マスターとかじゃないの?頭の中が混乱する。
「わ、わがまま言うなよな!ブスって呼ぶなって言ったのはお前だし」
顔を赤らめながらそういう彼。でも、それでもおかしい。ブス以外の言葉はいくらでもある。
頭の中でたった一言の自分の名前がグルグル回る。
「嫌・・・か?」
まだ座ったままのKAITOがつぶやいた。私はゆっくりとしゃがんだ。
「嫌・・・ではないですよ」
顔が熱い。KAITOを見つめていると、こちらを見てにっこり笑った。
「よかった」
その笑顔に意識が飛びそうになる。今まで見た事のない笑顔だった。夜なのに明るい。そう思わせるような・・・
はっとなってKAITOが顔を背けて「別に嫌でもいいけどな!」と叫んでいた。
もっと彼の笑顔が見たい。そう思いながら彼に抱きついた。
「うわっ!なんだよ」と当たり前な反応。私は何も言わずにそのまま抱きついていた。
するとゆっくり私の背中にKAITOの手がやってくる。
「星・・・きれいだな」
そう彼はつぶやいた。