第4章 俺の親愛なる
「え、私ですか?」
ここまで追い詰められた日向に更に一言言うの?
それはさすがに鬼畜じゃないだろうか。
「いや、多分もうこれ以上何も言わない方がいいんじゃないですかね。私も清水先輩以上のことは言えないですけど」
はは、と日向の平穏のために笑って誤魔化す自分マジエンジェル。
「や、違う違う。日向じゃなくて、月島になんか言ってやって」
「…蛍君、ですか?」
キャプテンから思いがけない名前が出て、一瞬反応が遅れる。
日向じゃなくてとっても平静な蛍君に声を掛けるってどういう。
「そ。ひまちゃんからなんか言ってくれれば月島も初めからエンジン全開になると思うんだよ、頼む」
ほらアイツって結構スロースターターな方だろ?とキャプテンが言うが、私が何か言ったくらいでエンジンを全開にする男ではないと思う。
それはまだ蛍君と知り合って日が浅い私にもわかる。
基本的に無気力。どこまでも無気力。
それでも身長とセンスがあるからそこそこオールマイティにこなせる恵まれたヤツって認識だもん、私の中では。
一生懸命やってるわけでもないのに出来ちゃうタイプの人っているけど、まさにそれ。
要領がいいって言うのかな。
それに日向とか飛雄ちゃんと違って向上心のあるタイプでもないし、基本的に覇気もやる気もない。
「え~いや、いいですよ。蛍君って他人から応援されたり励まされたりするの、結構嫌いなタイプだと思いますよ」
だからなんとなく私は蛍君のことが一番理解出来ているような気がする。
根本的に重なる部分が多い。
多分蛍君が『たかが』練習試合だって思ってることも、『たかが』なのに無駄に応援されたり励まされたりするのが鬱陶しいって思ってることも、なんとなくわかる。
まあ気持ちに大小あれどみんなそうだとは思うし。
むしろあれだけ部活に情熱を注げる日向と飛雄ちゃんが異常オブ異常だと思う。
「ん~いや、月島に関してそうなんだけど。でもひまりちゃんからの一言は特別っつーか、利くと思うぞ?騙されたと思ってほら、なんか言って!」
キャプテンが人の良さそうな笑顔で私に無茶ぶり。
基本的に穏やかで優しいのに時々強引なところあるよね、なんて若干溜息。