第3章 惚れたら負け
「..ツッキー、ボール落としたよ?」
あまりの唐突な可愛さに耐えきれずボールを落としてしまったらしい。
山口が拾って寄越すが、これが彼女だったらとしか言いようがない。
「はい。ねえあの子、うちのクラスのあの子だよね?ちょっと派手な感じの。あ、てかツッキーの隣の子じゃない?マネージャーやるんだね、ここの」
あの子うちのクラスのあの子ってなんだ。
禅問答じゃあるまいし。
彼女の名前がわからないのならそのまま黙っててよ。
荻原ひまりという超絶彼女にぴったりな可愛い名前があるでしょ。
いや別に山口に教えてやる義理はほんの少しもないからいいけど。
「あ~、ホタルくんだ!」
彼女がとててっと寄って僕へと話し掛ける。
待ってやめてやめて、平常心を保てない息が苦しい死ぬ。
「ホタルくんバレー部だったんだ~なんか私背高い人ってバスケ部ってイメージあってさあ、あは、ホタルくん男バスかと思ってたよ~」
「いやまず僕ホタ、」
「ツ、ツッキーはホタルじゃなくてケイだから!ツ、ツキシマケイって言う名前だから、そこんとこよろしく!」
ホタルホタル、と連呼する荻原に慌てた山口が口を挟む。
「なんでお前が僕の名前名乗んの山口」
「あっ、ごめんツッキー、だってつい...」
そんな僕らのやり取りを見て、荻原が可笑しそうに笑い出す。
「やだあ、知ってるよ。この前教えてもらったばっかりじゃんケイくんだって。ボケてみたつもりだったんだけど」
ニコニコと機嫌良さそうに笑う彼女のポニーテールが揺れる。
その彼女の笑顔に再度ケイでもホタルでもどっちでもいいかという思いが沸き上がる。
「...いや、別にどっちでもいいし、どうでもいいけど」
「ツッキ-!?どっちでもよくないよ!?ツッキーにはケイっていうカッコイイ名前があるじゃ_」
「うるさい山口」
「ゴメンツッキ-!」