第3章 惚れたら負け
「え~男バレの勧誘!?」
昼休みも中盤に差し掛かり、彼女..荻原ひまりは何やら輪の中心になっているらしい。
だから、と言うわけではないけれど、さりげなく耳を傾けたら自分にとって聞き逃せない単語が彼女(正確には彼女の友達)から聞こえてきたものだから、いくらか心に動揺を走った。
「ってちょっとツッキー聞いてる?」
目の前の山口が僕を訝しげに見るけど気にしない。
気にしてる余裕はない。
というかうるさい、今この瞬間だけは本当にうるさい。
「聞いてるから。山口うるさい」
「酷いツッキー」
相変わらずの決まり文句。僕の幼馴染も大概進歩がない。
「そうそう、なんかね、一年生で今のところ部活入ってないの、うちのクラスだと私だけなんだって。だからやらないかって」
「へえ、いいじゃんマネージャー。なんかカッコイイ、やってみれば?」
彼女の友達がなかなかいい仕事をする。
出来ればもう少し後押しすれば、彼女はいつものノリで男バレのマネくらい希望するんじゃないか、という一抹の希望が自分に走る。
その隙に山口はまたペラペラ聞いてないことを話すわけで。
でも今は山口のそんなテンションと自分のスルースキルが有り難い。
彼女の話に不審がられずに集中出来る。
「やーらないっての。だって私バレーなんて体育でしかやったことないし。ルールだって知らないもん」
「あ、そうなの?でもルールなんてさあ、別に入ってから覚えればいいじゃん」
「う~ん、まあそうかもだけど。ぶっちゃけ興味無いからなあ。それが一番の理由だわ」
彼女の『興味無い』発言で五トン程衝撃を喰らったわけで。
「あれ、でもさーひまりって中学の時女バスだったんでしょ。
高校ではやんないの?
うちのクラスで部活入ってないのってひまりくらいだしい、内申のために一応入っておいた方よくない?
私だってこれでも美術部だよお」
幽霊部員だけどね、と彼女の隣で友達その1が笑う。
「それはもっとないわ。もうあのきっつい練習したくないし、高校では遊びたいの!」
「お、じゃあ放課後カラオケ行っちゃう?」
「行っちゃう!」
「じゃあみんなで行くかあ」
「いいねえ、行こ行こ!」
なんて彼女と彼女の友達の何人かで勝手に盛り上がってるけど、既に僕は呼吸が出来てるかがギリギリのラインくらいでショックから立ち直れていなかった。
