第5章 ネコとの邂逅
「ねぇ、クロ」
烏野と別れ、仙台駅から新幹線に乗り込んだ。
俺の前にクロは、『天使さま』と交換したらしいアドレスが入ったスマホを握りしめてニヤニヤニヨニヨ、気持ち悪いことこの上ない。
クロ、『天使さま』の前ではいつも通りに見えたのに、別れた途端、なんでこんなに残念なんだろう。
「何だよ研磨。話しかけといて黙ってんのはいつも通りだけど、俺の顔見ながらドン引きしないで?」
あー、話すの忘れてた。
「クロの『天使さま』、やっぱり綺麗だね」
……
「はぁっ!?!!!!??」
うるさ。
一瞬の沈黙のち、座席から立ち上がって大声で叫んだクロの膝を、夜久くんからの強烈な蹴りが襲い、海さんは邪気のない微笑みを送り、しかし、クロは冷や汗をかいて黙り込み座席に座り直した。
「研磨がそんなこというなんて…っ!成長したな!!
けど、"angel"に手は絶対出すなよ!」
そういう意味で言ったんじゃないし。
てか、クロは俺の何なの。
「…さてね」
「ちょ、お前、マジで!?いや、俺は許さねぇぞ!!」
そんなこと言ったら、クロがもっと煩くなるのをわかってるのに、そんな返事をしたくなったのは
「黒尾、煩い」
…何でだろう?
ま、いっか。
再び落ちた海さんの静かな雷に縮こまったクロを横目で見ながら、車窓に流れている景色を視界に入れていた。
『天使さま』にも翔陽にも会えたし、宮城合宿、悪くなかったな。
俺がゲームをやるわけでもないのに、無意識で『天使さま』のアドレスが入ったスマホを握っていたことは、気がつかなかった。