第3章 出会いの化学変化
日向くんじゃないけれど、真っ黒なジャージは嬉しくて、試合後なのにすぐ練習しようとする日向くんと影山くんを微笑ましく見ていた。
「実際の試合には、月島×3みたいなブロックがいるんだからな!」
という影山くんの発言には笑ったが。
実際の試合、ねぇ。
烏野といえば音駒、とか?
「相手は県のベスト4!!"青葉城西"高校!!」
いや、これは想定外だ。
「どうやって組んだんだろう?」とかいう蛍の至極まっとうな呟きとか、
「土下座得意だけど今回はしてないよ」とかいう顧問の武田先生の爆弾発言にも反応する余力はなかった。
青葉城西ってことは、当たり前のように及川先輩がいるし、岩泉先輩はいいとしても、国見くんもいる。
不味い。
どう考えてもバレる。
国見くんはスルーしてくれるかも知れないが、及川先輩の空恐ろしい嗅覚??はどうにもならない。
「カナ、知り合いいるんでしょ?」
見透かしたようにーー事実、見透かして聞いてきた蛍に1つ、頷きを返す。
「向こうのキャプテン、中1のころに何回かトスとかサーブとか教えてるし、あの大会にも来てたはず。つい最近捻挫したらしいから、スタメンでは出てこないとおもうけど……」
「見つかったら?」
ぼやかした言葉の先を聞いてきた蛍に思わず苦笑する。
「………間違いなく話しかけてくるね。あの人、嗅覚変だし」
今度はわかりやすいため息。
「まぁ、諦めなよ。バレーに関わってたら、いや、関わってなくてもか、いずれバレるよ。知名度ないとはいえ、カナ、一部では有名なんだから」
蛍の発言は、過大表現でも何でもない。
自分でもわかってる。
あの時、バレーから離れられなかったくせに、過去のことを無かったことにしようとするなんて虫がいいってことくらい。
本当のことさえ、自分の口から言う勇気がないのに、マネージャーとして支える、なんて
「はい、また考えすぎ。取り敢えず、フツーのマネージャーやってくれない?喉乾いた」
わざと目の前で手を叩かれて、軽く屈んで視線を合わせてくる。
無理矢理中断させられた思考を放っておいて、ドリンクを作りに水道に向かった。
そうだ、目の前の仕事をちゃんとしないと。
今の私に、出来ること。