• テキストサイズ

満開桜

第25章 We need you 全員 甘切夢


幸『俺はすぐ監督に相談しようとした。でもめぐはそれを言うと自分の居場所が、自分が必要じゃなくなるって、泣きながら言ったんだ…』
いづみ『めぐちゃん…』
めぐは俯いたまま膝の上で手を強く握ったまま動かない。
幸『あんなに衣装作りが好きで、スタイリングの時もあんなに楽しそうにしてたのに…その道具を触るのもやっとで…そんなめぐに、俺は何もしてあげられなかった…』
天馬『幸…』
椋『幸くん…』
幸が涙を流しながら崩れ落ちた。千景が動く。めぐの前にしゃがみ強く握られた手を包む。
千景『…めぐ、話せる?』
俯いたままだっためぐは千景の方を見て小さく頷いた。
千景『ゆっくりでいいから。深呼吸してごらん…そう、いい子だ。』
「…この前のことが、あった後から…ハサミ、とか…針が怖くて…最近はやっと触れるようになってきて…でも、それを幸が気が付いてくれたの。幸は、いづみちゃんに相談しようって言ってくれた。でも…衣装も作れない、スタイリングも出来ないじゃ…わたしがいる意味がなくなっちゃうから…幸にお願いして黙っててもらったの…幸、ごめんね、辛かったよね…ワガママ言ってごめんね…」
幸『俺は辛くないよ!めぐの方が…!』
「いづみちゃん、いえ、監督…少し時間をもらえませんか…?」
いづみ『…わかりました。』
「ありがとうございます…みんなも心配かけてごめんなさい。あと、ありがとう…」
そう言うとめぐは自室に戻った。
団員達は重い沈黙の中、様々な思い巡らせていた。
ーーーーーーーー
107号室
「ふぅ、こんなもんかな。幸への衣装の引き継ぎと莇へのスタイリングの引き継ぎ。いづみちゃんへの公演のフィードバック。左京さんへの予算案にチームリーダーへの連絡事項。よし。あとは荷物をまとめればオッケーかな。」
めぐはカンパニーを誰にも言わずに去るつもりだ。勿論、残りの仕事でなるべく迷惑をかけないように引き継ぎ資料まで作った。もうこれ以上の心配も迷惑もかけられない。かけたくないのだ。嫌われてしまう前に自分からいなくなろう。みんなからいらないと言われる前に。
/ 242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp