第25章 We need you 全員 甘切夢

談話室に異様な空気が流れる。めぐは気まずそうにキョロキョロする。そして左京が口を開いた。
左京『摂津。説明しろ。』
有無を言わせぬ左京の雰囲気に何人かの団員が怯む。
万里『俺が花学にいた頃に遊びで付き合ってた女の男だと思う。あの時の俺は彼氏がいようがいまいが、寄ってくる女は拒まなかった。本気になってくる女も面倒だからすぐに捨てた。その報復が今回…めぐに向かっちまったんだ…』
万里が悔しそうに唇を噛む。
左京『…テメェの不始末でめぐがどんだけ傷付いたかわかってんのか！！』
「さ、左京さん！わたしは大丈夫だから、」
左京『めぐは今は黙ってろ』
「！！…はい…」
普段なら食い下がるめぐだが今の雰囲気の左京には逆らえなかった。すると幸が立ち上がり万里の元に歩き始めた。そして。
バキッ、ドサッ
左京『瑠璃川…』
「幸！？」
幸が拳を振り上げ万里を殴った。万里は尻餅をついたまま立ち上がらない。
幸『…女の子の顔や体に傷や跡が残ることがどれだけのことかわかってんのかよ！！』
座ったままの万里に幸が胸ぐらを掴み怒号を上げる。
幸『この間の傷だってやっと治ってきたんだよ！でもな、外の傷は治っても心の傷は！！…治らないこともあるんだよ！！そんなこともわかんないのかよ！！こんなこと、イージーモードのお前なら考えられただろ！！』
天馬『幸！落ち着け！』
椋『幸くん、落ち着いて！』
2人が幸を万里から引き剥がす。
幸『めぐが今もあの時のことを思い出して眠れない日があるの知ってるか！』
「幸！ダメ！」
幸『あの時の恐怖で体が震えて、衣装作りの時に手が震えてるの見たことあるか！？』
その場にいた全員が驚愕した。そんなことはまるで知らなかった。
めぐはあれ以降も普通に振舞っていたし、いつも通りに見えていたから。
幸『みんなには黙っててくれって言われたから今まで黙ってたけど、もう我慢できない！！』
「幸、それ以上は、」
幸『本当はあれから尖ったものもダメなんだ…』
幸の目に涙が溢れて声が震えている。全員がめぐの方を見た。先端が尖っている物がダメ。衣装作りに使う針やハサミが使えない。スタイリングの時のコームや小物を使えない。それはめぐがカンパニーのスタイリストとして担っている役割に支障があるという事だ。