第10章 はじめての夏 シンドバット [完]
『暑い、溶ける…』
シンドリアへ来て初めての夏を迎えた。
常夏のシンドリアよりも北部に位置するアトヌス王国で生まれ育ったからすれば、シンドリアの夏は地獄に等しい。
『ヒナホホは何で平気なの…』
極北イムチャックの村で育ったヒナホホは、に比べれば随分と平気そうに見える。
ヒナ「俺も平気ではないが、慣れだな」
『うー…』
すっかり夏バテ状態のは、唸りながら机に突っ伏す。
ジャー「大丈夫ですか」
見兼ねたジャーファルはの前に少し底の深いガラスの器を置く。
『何これ?』
器の中に入った細かく砕かれた氷と赤い液体に、は体を起こしてジャーファルを見る。
ジャー「好きだと思いますよ」
食べてご覧なさいと言われ、は真っ赤なそれを一口食べる。
『何これ!』
ジャー「かき氷です。気に入りましたか?」
『おいひー』
地に着かぬ足をパタパタと動かし顔を綻ばせるは、実年齢以上に子どもっぽく見える。