第11章 珪線石の足音
車の扉を開けてシートに座らせると、照れているのかもじもじしていらっしゃる。
そういや車乗せてもらうの好きだよな、運転中こっち見てるの知ってるけど。
が、彼女からの視線を感じてドアを閉めるのをやめると、恥じらいながらも両手をのばされて胸が撃ち抜かれた。
なんだそれなんぼでも抱っこするが???
即座に抱きしめた。
この生き物は俺が可愛がります。
ひとまず大丈夫そうになったので運転席に乗り込むと、じぃ、と感じる視線。
「……今日はよく見てるな?」
『へ……あ、ごめんなさい気持ち悪いことして』
「いや、可愛いなって言ってるんだけど」
『……そう??』
「慣れていこうなぁ、せっかく可愛いんだから」
走り始めたところで、いつもと違う道に出て、目がきらきらしているような。
「リアちゃんよ、けっこう夜景好きだよなぁ?」
『へっ!?い、言ったことない』
「おまえ夜の展望デッキ好きだろうが」
『……言ってない、それも』
見てれば分かる、と微笑んでから、それならば遠回りをと思ったところで妖の気配。
なるほど、舐めてやがるな。
「目瞑って、耳塞いでろ」
『!あの、私も「いいから。デート中だろ?」……はぁい』
信頼して笑ってくれるのを撫で、本当に言った通りにしているリアを車に残して外の塵共を一掃した。
席に戻って肩に触れると少し震えていて、お待たせと抱きしめるとほっとしたような顔をする。
……ずっと一人で耐えてたんだよなぁ、おまえは。
「怪我してないか?」
『中也さんは??』
「俺があんな雑魚共相手に怪我するかよ」
『私もしないよ』
「リアは俺より繊細なんだ、髪の毛一本でも切らせちゃいけねぇからな?分かってるか?」
ぷっ、と笑ってくれるが、冗談だとでも思われているのだろうか。
こんなにも本気だというのに。
『ふふ、過保護』
「それくらいでちょうどいいんだよ、うちの姫さんには」
『やっぱりちゅうしてもいい?』
「だぁめ」
『え〜』
もう半分楽しんでるだろおまえ、と思いつつ流されて甘やかしてしまう俺も俺なのだが。
一度だけだと決めてからしてやると、そうなると分かっていたとでもいうような嬉しそうな表情をされてしまう。
「その顔絶対他所でするなよ、可愛らしいのがバレちまう」
『バレたらダメなの?』
「束縛してんの」