第11章 珪線石の足音
「おっ、やっぱりいた。どもっす」
「おお立原、手前も昼飯『立原君見て見て!!中也さんがハンバーグハートにしてくれたの!!!』おまえほんと分かりやすいな???」
「お?良かったじゃねえか、美味そうだなあ相変わらず」
『いいでしょ〜♡』
立原の奴、よく分かってやがる。
俺を褒められると妙に嬉しがるリアに対する最適解はそれだ、それでいい。
『中也さんのご飯は一番美味しいからね』
「リアちゃん専用だがな」
『そう、リア専用……♡』
自分だけのものというのが大好きなのだ、この子供は。
「いいなぁ、今日のも美味そうだ」
『あげないけど』
「分かってるよ、おまえのために作ってくれたんだろ?中也さんも」
『立原君のそういうとこがすき』
つってもラブのばら撒きをしすぎな気もするがな。
『!!今なんか中也さんにヤキモチ妬いてもらえたような気がする』
「なんで嬉しそうなんだよ可愛いなおい」
その実、俺のカードがあったのなら満腹まで食うくらいのこと出来ただろうに、それをわざわざしなかったのはこれを待っていたからなのだろう。
「ほら、口開けろ」
俺に手料理を食わせてもらうのが至高のご褒美なのだ、こいつにとっては。
「美味い?」
少し照れたような顔をして目を逸らしながらも頷くリアは、文字通り恥ずかしがっているのだ。
心底可愛がられることに慣れていない、まだまだ甘やかしがいがあるな。
「ところで中也さん、今日はデートなんですって?」
「おー、まあリアがまだまだ万全じゃねえし、安静にさせつつだがな」
「へー、リアちゃん中也さんとデート行くんだ?」
『…………う、ん』
ん?と俺以外の三人が疑問を抱く。
「ねえ、何その初な反応。デートなんてよくしてるよね?ね??」
『ち、中也さんからでぇとって誘ってもらうのすきで』
「ほんと初だな!?どこ行くんだよ今日は」
『き、今日ね?今日あのね??ドライブした後に温泉に連れてってくれるって』
「えらく嬉しそうだな……?」
お嬢様なのに、とでも言いたげな目線だが、まあそれはそうなのだろう。
『夜景が綺麗なとこなんだって。リア夜にお外出してもらえるの楽しみで』
「!そうか、先祖返り……そうかそうか、そりゃあそうだなあ」
「そっかあ、夜だと危ないんだもんね?」
『中也さんが何とかしてくれるんだって』