第11章 死者の夢
「よかった。キャプテンがタイプじゃない人なんだね」
「あんな暗そうなのはゴメンだね。あんたみたいなかわい子ちゃんなら歓迎だけど」
青虫がに顔を近づけたのを見て、ローはを手元に引き寄せつつ鬼哭を振り上げた。
「ぶっ殺すぞてめぇ!!」
腹を抱えて大笑いし、ひらひらと青虫は1万ベリー札を振る。
「今度倍にして返すよ。バイバイ子猫ちゃん」
「バイバイ」
「、あんなやつに手なんか振らなくていい!」
つい、とは答えた。
「なんだか楽しい人だったね」
「楽しいかアレ?」
「キャプテンは好きじゃない?」
「ない」
断言すると、はちょっとうれしそうに笑った。
(可愛い……)
天気もいいし、と一緒に昼食も食べられるし、今日はいい日だなと思っていたら――。
「そうだ。キャプテン、私お別れを言いに来たの」
衝撃すぎて死ぬかと思った。
113.託されたもの
気づいたらローは公園のベンチで、の膝を枕に寝ていた。
「大丈夫? ふらふらになって倒れちゃったんだよ」
起きたことに気づいたのか、は心配そうにローの頭を撫でた。夢かとほっとして、ローはの手を握る。
「にお別れ言われるぶっ倒れそうな夢を見てた」
「えっと、それ夢じゃないの。あ、ええと、正確には全部夢なんだけど」
「また気絶しそうだからやめてくれ……」
改めて別れを言い直されそうな気配に、ローは「聞きたくない」と横を向いた。の太もも撫でながら何もかもから逃避したい。
「キャプテン、大事なことだよ」
「一番大事なのはと一緒にいることだろ」
「でも、ベポたちもみんな骨になっちゃう」
白骨の上にいる白昼夢を思い出し、仕方なくローは起き出した。
都合の良すぎる幸福だとは自覚があった。だからいつか壊れそうだとずっと不安で、その時が来たのだと感じてしまう。でも納得なんかできるわけなかった。
「どこにも行かないって約束してくれただろ」
「……そばにいるよ。ずっと。何があってもキャプテンのそばにいる」
なだめるようには微笑んだ。まるで死期の近い母親が、小さな子どもに言い聞かせるように。
(嫌だ……)