第11章 死者の夢
また失ってしまうなんて耐えられない。
魂だけそばにいてくれたって意味がないのだ。触れて、話して、笑ってくれるが必要なのだ。
「なんでもする。を失わずにすむならどんなことだってするから。状況を教えてくれ。一緒にいられる方法を考えよう」
ちょっと困った顔をしながら、は説明してくれた。
◇◆◇
「ここはユメユメの能力者が支配する、夢の島なの。島に上陸した瞬間からみんな夢に取り込まれてる。キャプテンやベポたちの体は今も飲まず食わずで眠ってるんだよ。早く起きないと栄養不足で死んじゃう。骨になっちゃうよ」
「は?」
「私の体はヘイアン国にあるもん。マリオンたちがお世話してくれるから平気」
なら最悪このままでもいいかとローは物騒なことを考えた。ベポたちは起こさなければならないが、と一緒にいる方法がそれしかないなら、最悪自分は骨になってもいい。
『勇気があるなら、街の人間に誕生日を聞いてみな。面白いことがわかるだろうぜ』
青虫はそう言ったが、聞くまでもなく診療所に来る患者たちのカルテを作成するときに生年月日は確認していた。
患者たちの生年月日はこの500年の間でさまざまだった。500年前に生まれた人間もいれば、300年前に生まれた人間もいる。
肉体が死んでも夢の中で人は生き続けるのだ。新聞の日付も500年前のまま止まっていた。紙面に載っているのは歴史の出来事のような古いニュースばかり。
(この島は500年前の平和を繰り返してる……)
そこに上陸者が加わり、上陸者が会いたい人間をさらに加える。本物と見間違うほど精巧な、死んだはずの大事な人。
「コラさんは――」
「本物だよ。ユメユメの実は、死の間際の夢を時空を超えてつなげることができるんだって。ここで会う人たちはみんな本物なの。たとえ現実ではもう決して会えなくても」
なおさら夢を終わらせたくなくて、ローは首を振った。夢を終わらせればコラさんはまたあの北の海で、一人ぼっちで死んでいくのだ。
それを救うすべが何もないというなら、ここで彼のためにできるすべてのことをしたい。そのほうがずっと有意義だ。
「しっかりしてキャプテン! 夢に逃げちゃダメ」