第11章 死者の夢
「ストレス性の胃炎だろ。脂っこいものは避けて粥でも作ってもらえ」
「わかったよヤブ医者」
「なんならオペして胃を取り出してやろうか?」
コリンは速やかに逃げ出した。飼い主を心配していたらしいミケが合流して、「ふにゃー」と先に逃げた言い訳をしている。
「よし、邪魔者はいなくなったな」
「患者さんを邪魔者なんて言っちゃだめだよ」
ローは聞いていなかった。の唇にやっとキスを落とし、
「天気もいいし公園に行くか」
上機嫌で、彼女の手を握った。
◇◆◇
「お、強姦魔」
公園に向かう途中、油虫を見るような目で声をかけられ、ローは固まった。
「強姦魔……?」
聞き捨てならない単語に「まさかそこまで」と言わんばかりの不信の目をはローに向ける。
鬼哭を抜いてローは切れた。
「誰がだ!!」
パンクファッションに身を包んだスレンダーな女――青虫ことミギーは、「強姦魔は言い過ぎか」と訂正した。
「裸に剥かれただけだからな」
「キャプテン……」
「無実だ! そんなことしてない!!」
の顔が見れず、ローはさらに怒鳴った。せっかく楽しいピクニックになるはずだったのに何てことしてくれるのか。
「裸を見せた仲だ。ちょっとツラ貸せよ」
「断る」
とピクニックなのに了承するわけがなかった。たとえ急患でも、瀕死じゃないならローは絶対に戻らないと決めていた。
「んじゃ裸の見料に1万ベリーほどよこせ」
どうも酒切れらしかった。さっさとしろとばかりに手を差し出され、それでこのアル中がどっか行くなら金を渡すのもアリかもしれないと考える。
悩んでるうちに、がお気に入りのもこもこサイフから一万ベリーを出して渡してしまった。
「あの……キャプテンがごめんなさい」
「待て。俺の無実を信じてくれないのか」
「キャプテンに下心がなくても、女みたらしの周りにはハプニングがつきまとうの」
そんな的確に状況を把握しないでほしい。そろいの指輪を見て、ミギーはピュウと口笛を吹いた。
「色男の新妻か。新婚だから誤解されたくないって、あいつそりゃあひどい狼狽えぶりだったんだぜ」
酒代が入ったためか、ミギーは愉快に笑った。