第11章 死者の夢
「ずるずるしちゃうとお別れ辛くなるから。……でもコラさん。私いま、どうやったらキャプテンを起こせるかわからないの」
「ちゃんがキスしてあげれば起きるんじゃないかな」
「毎日してるよ?」
うーんと二人は考え込んだ。
「そもそもこれ、誰の夢なんだ? 俺の夢かと思ったけど、ローやちゃんは本物なんだろう?」
「ケトスの話だと、ユメユメの能力者は自分の夢に人を取り込んで好き放題できるみたい」
「ケトスって友達?」
「うん。夢に詳しいの」
は海神の説明をかなり大雑把にした。
「つまりここは、ユメユメの能力者の能力圏内ってことか。……その割に、平和な夢だな」
何でも願望が叶うなら、普通はもっと欲望丸出しの夢になりそうなものだが。
「ユメユメの能力者は優しい平和主義者なのかな?」
「……ちゃんそれ本気で言ってる?」
「うーん。言ってみただけ」
本当に優しかったら島に来た人間を取り込んで、骨になるまで捕らえ続けるなんてことはしないだろう。
しばらく考えたが埒が明かず、は縁側から立ち上がった。
「こういう難しいこと考えるのはキャプテンの仕事だよ」
「そうだな、頭脳労働は任せよう」
意見が一致したので、は自分の仕事――お昼ご飯作りに取り掛かった。
112.予兆
「眠い……」
あくびをしながら、診療所の外の小さな庭に設えられたハンモックに視線をやるローに患者は怒鳴った。
「仕事しろヤブ医者ー!」
フギャー!と猫まで同意する。この間注射した恨みらしい。
「小児科でも獣医でもないってのに……頭が悪いんだったか? 付け替えればどっちも解決だな」
刀を抜かれて、コリンとミケは震え上がった。
『あらちゃん、先生のお迎え?』
『お昼食べに帰って来ないから、忙しいのかなって思って。お弁当持ってきたの』
診療所の外から聞こえた朗らかな声に、ローは患者をほっぽって外へ出た。
「! 来てくれたのか」
喜色満面で抱き上げ、くるくる回るローを見て、コリンはどん引きした。
「いい大人なのに……恥ずかしくないの?」
「全然」
ローは強かった。恥ずかしそうにするの額にキスして、「一緒に食べよう」とデートに誘っている。